プレス油の種類
2022.06.29
【2022年6月29日加筆修正】
ディーラー様より問い合わせです。
「プレス加工油について教えてほしい。いっぱいありすぎて何を選んでいいのかよくわからない。油性と水溶性って何が違うの?そして乾燥タイプと普通の油性タイプの違い、それから塩素入りと無し(フリー)の違いは?」
回答)
Ⓐ 油性と水溶性のプレス油の違いについてです。
一般に油性の方が加工性に優れています。
水溶性は水で希釈して使用できること、脱脂や洗浄工程がラクになること、からコスト面で有利です。
また周辺の掃除も簡単にでき、作業場がきれいに維持できるとの声もあります。
非危険物なので保管する量を気にしなくてよいこともメリットです。
Ⓑ 乾燥タイプと普通の油性タイプです。
乾燥タイプのプレス油には揮発する成分が入っており、ワークに塗布したときから加工後まで徐々に揮発して、製品に残留する油がほぼ無くなるタイプです。加工後の洗浄がラクになる(場合によっては無しになる)メリットがあります。
デメリットは揮発しない普通の油性タイプと比べて加工性能が弱いということです。洗浄しやすくするため強力成分を多く配合できないこと、塗布直後から揮発が始まるので金型やワークにとどまる油の量が油性タイプより少なくなってしまうこと、などがその理由です。
乾燥タイプは加工後の『洗浄レス』を優先にしており、洗浄工程(洗浄コスト)を削減する目的で使われます。それに対して通常の油性タイプは『加工性』を優先しています(本来はこちらが通常です。加工するための油なのですから)。
乾燥タイプのプレス油のより詳しいお話は、こちらの記事をご覧ください。
Ⓒ つづいて塩素入りと塩素フリーについてです。
ここで言う「塩素」とは塩素系極圧添加剤のことです。とても良い潤滑力で、きつい加工にも対応できるため、昔からよく使われてきました。特にステンレスの加工には最適のようです。
ところが、使用後の廃油処理を正しくしないとダイオキシンを発生させることがあるため最近では使われなくなってきました。プレス油が付着した加工製品は、たとえば炭化水素系の洗浄剤で洗浄されますが、洗浄廃液に塩素が含まれるとその処理に費用がかかることもあります。
塩素入りタイプは『強力な加工性』ですが、最近は『環境』面を優先して塩素フリータイプが使われます。加工内容によっては塩素フリータイプでも塩素入り同等の加工性能を出せるようになってきています。こちらの記事「塩素フリー化の取り組み」もご覧ください。
加工の難易度や工程に合わせることはもちろん、金型の寿命を延ばす、後工程の違い、洗浄方法の違い、油自体の取り扱いのしやすさ、などさまざまな要望にあわせて「いっぱい」ラインナップされておりますので、どの商品を選んだらいいのかなど、お気軽にご相談ください。