プレス油の粘度と加工性
2023.06.19
こんな問い合わせをよくいただきます。
「高粘度のプレス油のほうが、加工性がいいの?」
回答)
経験上、そのように感じることが多いと思います。が、そうとも限らない事例が数多くあります。
粘度は液体がどろっとしていれば高い数値となり、さらっとしていれば低い数値となります。
一般に私たちの業界では「動粘度」で表し、厳密に言えば粘度とは少し異なりますが、似た感覚の言葉として数値を比較することができます。
「動粘度が高い油のほうが加工性がよい」と感じられる理由ですが、
どろっとした油は金型やワークにくっつき、まとわりつきやすいと想像できます。
実際に油膜切れしにくくなり、金属同士の接触を少なくすることができます。
一方で、「動粘度が高い油のほうが加工性がよい、とは限らない」理由です。
プレス加工潤滑剤は油性剤や極圧添加剤など様々な添加剤を組み合わせて作られています。
これらの添加剤は金型やワーク表面にくっついて(物理的に吸着または化学的に結合)、金属を滑らせるための膜を作ります。
添加剤は、くっつく温度、くっつく順番、くっつく強さが異なります。
低温領域でくっつきやすいものがあれば、高温領域でくっつきやすいものもあり、これらは高粘度の添加剤もあれば低粘度の添加剤もあります。
くっつく順番や強さは化学構造(分子構造)によって決まり、動粘度と直接関係しません(粘性が高すぎると動きにくくなり順番が遅くなることはありますが)。
これらをうまく組み合わせると低動粘度で良い潤滑性能をもつ油をつくることができ、当社では、お客様の加工内容・ご希望に合わせて製品つくりをします。
そういった中で、お客様から「低動粘度品の使用で脱脂工程がラクになったよ。もちろん加工も問題ないよ」といった声をいただくこともあります。
とは言うものの、加工部分に油が運ばれなければ意味がなく、ある程度の粘性は必要です。
一見同じように見える加工であってもクリアランスが異なり油の運ばれ方が異なるなど、加工によって最適な油は異なります。
最適な製品に絞り込むため、まず2~3製品をご提案しています。サンプルトライにて傾向を確認し、次のステージに進むととても良い結果となることが多いです。
まずは、お気軽にお問い合わせください。