【メカタップジェル開発秘話】 垂れにくく流動性を持った切削油
2024.04.24
今回のブログは、開発者目線からの油性切削剤メカタップジェル開発秘話です。
お客様からの
「当社の既存タップ加工油は低粘度なため、下穴に塗布したときに下にたれ落ちてしまう。
塩素フリーで難加工用の切削油剤を高粘度化し、下にたれ落ちず、ほどよく流動性を持ったタップ加工油に改良して欲しい。」
という開発依頼により、メカタップジェルの開発を始めました。
当時(2013年ころ)、タップ加工油剤として、市場には液状(オイル)タイプの他に、ペーストタイプのものがありました。
ペーストタイプは液状タイプのものと比べて、垂れにくいという利点はあるのですが、使用後の脱脂(特に冬場)がしにくいという短所がありました。
したがって、開発にあたり、ペーストタイプと差別化するためにペーストタイプよりも脱脂がしやすいことも性能目標の1つでした。
しかしながら、脱脂性を高めたうえで、液が垂れないようにすることには、開発のハードルが大変高いものでした。
開発当初、既存品をベースに増粘剤の添加を検討しました。
この手法はこれまでも、油性の加工油剤製品の高粘度化によく用いていた手法でしたが、
垂れないようにするという点で、かなり高粘度の成分を使用したため、
潤滑成分等の他の添加剤との相溶性が悪く、結局うまくいきませんでした。
(※相溶性とは、二つの違う液体が溶けて混ざり合う性質のことです。)
そこで、他に何かないかと調査したところ、ゲル化剤という物質があることを知りました。
ゲルとは、流動性のある状態のものが凝固してジェル状に固まった状態を指します。
この状態の変化をゲル化といい、このゲル化を助ける物質がゲル化剤です。身近なところで食品のゼリーや羊羹、グミなどに使われています。
ただ、ゲル化剤は水溶性のものが多く、油性の加工油剤に使えるものは多くありませんでしたが、
調査、検討を重ねた結果、理想のジェル状態にできるゲル化剤に出会うことができました。
そして、ユーザー様におけるテストにおいて、代表的なペーストタイプの他社品と同等レベルの加工性で、
かつペーストタイプよりも脱脂がしやすいとの評価をいただき、無事営業マンの要望に応えた商品を完成させることができました。
また、かき混ぜると一時的に軟らかくなる(液状に近づく)性質をもつため、「塗布しにくい形状や穴内部へ浸透させたい場合にも柔軟に対応できてよい」という嬉しい言葉もいただきました。
開発に着手した時は、開発内容からもっと簡単に開発できるだろうと思っていました。
でも意外なところで苦労したのと、当時はジェルタイプのタップ加工油剤が珍しかったのもあって、商品化できた時はとても嬉しかったのを覚えています。
垂れにくく、脱脂しやすい切削油剤メカタップジェルに関することや
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