極圧添加剤の原理とは?
2023.08.10
「極圧添加剤(きょくあつてんかざい)[EP剤] ってなに? どんな働きをするの?」
回答)
工具・金型とワークの間で加工中に作用する潤滑成分の一つで、高温、高圧下になると働く成分の総称です。
高温、高圧の厳しい条件下にさらされると、その成分は分解し、金型やワーク表面に化学結合して表面を滑りやすくします。
主に油性の加工油に配合されています。
加工するとは、工具・金型をワークに押し付けてワークを変形(切る、削る、曲げる、伸ばす、肉を寄せる、など)させ、目的の形状にすることです。
ワークが変形する接触面は、相当な圧力がかかり、高い温度(極圧下)になると想像できます。
工具表面とワーク表面の間に何も存在しないと凝着(例えば鉄どうしがくっつく)してしまいます。
そこで、凝着しないように潤滑剤が使用されます。
加工油には様々な成分を含みます。
いろいろな種類があり、含まれる化学物質の系統から「塩素」系、「硫黄」系、「リン」系がよく知られています。
当社油性プレス加工潤滑剤や油性切削剤にも配合されており、各製品の成分欄を見ると、極圧添加剤(塩素、硫黄、リン)などと書かれています。
これらの成分は高温高圧下で分解して金属表面に化学結合し、潤滑面を作ります。
加工は一瞬なので成分が働いている瞬間を見ることは難しいですが、
加工後の表面分析から極圧添加剤が分解して結合したことがわかるそうです。
ワークが切られたり伸ばされたり変形(工具も一部変形)するとき、ワーク材料の内部から新しい面が次々と表面に出てきます。
この面はとても新鮮で、様々な物質と反応しやすいそうです。
すなわち金属(工具)と凝着するより先に、極圧添加剤が反応する必要があります。
加工油として表面全体に塗られている極圧添加剤は、ワーク変形の瞬間、分解して出てきた新鮮な面に対して、金属(工具)の凝着と競争しながら反応していくと想像できます。
極圧添加剤には種類や化学構造によって、低めの温度帯で働くものもあれば、高温下で働くものもあります。
また最近では塩素系はあまり使われなくなってきました(こちらの記事参照)。
さらに材質との相性も重要です。
例えば銅系材料は硫黄と反応しやすく、下記写真右のように黒く変色させることがあります。
当社では、目的とする加工、現在の課題をお聞かせいただき、適した極圧添加剤を配合した製品をご案内しています。
油性プレス加工潤滑剤、油性切削剤についてお気軽にご相談ください。