水溶性切削・研削油剤の腐敗原因とは? 防腐剤の仕組みと種類を基礎から解説
2026.01.09
〜水溶性切削・研削油剤が腐敗する理由と対策〜
水溶性切削・研削油剤には、使用中に発生する腐敗を防ぐ目的で防腐剤が配合されているのが一般的です。
本記事では、この「防腐剤」に焦点を当て、水溶性切削・研削油剤がなぜ腐敗するのか、そして防腐剤がどのような役割を果たしているのかを分かりやすく解説します。
水溶性切削・研削油剤が腐敗する理由
そもそも、水溶性切削・研削油剤の腐敗はなぜ起こるのでしょうか。
腐敗の原因となるのは、微生物(細菌・カビなど)の繁殖です。
これらの微生物は、以下のような経路から加工液中へ侵入します。
- 作業者や衣服
- 希釈に使用する水(上水・地下水など)
- 機械設備や配管
- 被加工物や切りくず
微生物が生育・増殖するためには、次の「三大要素」が必要です。
- 温度
- 水分
- 養分
水溶性切削・研削油剤は、これらすべての条件を満たしやすい環境にあります。
- 日本国内の工場環境(20〜40℃)は、多くの微生物にとって生育しやすい温度帯
- 使用時に水で希釈されるため、水分は常に十分
- 加工液中には、微生物の栄養源となる成分が多く含まれている
このため、水溶性切削・研削油剤は微生物が非常に繁殖しやすい環境となり、適切な対策を取らなければ腐敗は避けられません。
表1.微生物の主な栄養源
| 栄養源 | 内容 |
|---|---|
| 炭素源 | 鉱油、合成油、動植物油、脂肪酸、脂肪酸エステルなど |
| 窒素源 | アルカノールアミン、空気中の窒素、各種添加剤など |
| 無機イオン | 希釈水中の溶存成分、被加工材の切りくず、防錆添加剤など |
防腐剤の作用メカニズム
微生物の繁殖を抑制する方法はいくつかありますが、防腐剤の添加は手軽かつコスト面でも優れているため、最も一般的に採用されている方法です。
防腐剤にはさまざまな種類があり、それぞれ
- 作用の仕方
- 効果の持続性
- 対象とする微生物の範囲
が異なります。そのため、油剤の種類や使用条件に応じて適切な防腐剤を選定することが重要です。
代表的な防腐剤の種類と作用メカニズムを以下に示します。
表2.代表的な防腐剤の種類と特徴
| 種類 | 作用メカニズム | 特徴 |
|---|---|---|
| トリアジン系 | 菌体内に侵入し、タンパク質と反応して細胞壁の合成を阻害 | 長所:速効性が高く、比較的安価 短所:カビ・酵母への効果が弱い |
| イソチアゾリン系 | チオール含有酵素と反応し、呼吸代謝を阻害 | 長所:持続性が高く、幅広い菌に有効 短所:皮膚刺激性が強い |
| ピリジン系 | 金属イオンとキレートを形成し、物質透過を阻害 | 長所:持続性が高く、広範囲に有効 短所:金属との反応による変色 |
| フェノール系 | 酸化的リン酸化を阻害し、エネルギー産生を妨げる | 長所:広範囲の微生物に有効 短所:pH低下、廃液処理が必要 |
| カチオン系 | 細胞表層のタンパク質と反応し、細胞壁を破壊 | 長所:細菌・カビ・藻類に有効 短所:ソリューションタイプ油剤に限定 |
なお、微生物の中には「環境に適応し、防腐剤に耐性を持つ『耐性菌』」が発生する場合もあります。そのため、現場では単一の防腐剤に依存しない運用が重要です。
防腐剤の複数併用効果
より効果的に微生物を抑制するためには、複数種類の防腐剤を併用する方法が有効です。
複数併用により、
- 単一防腐剤の効果限界
- 細菌のみ/カビのみへの偏った効果
- 耐性菌の発生
といった課題を補うことができます。
さらに、併用することで次のような相乗効果も期待できます。
- 添加頻度・期間の延長
- 低濃度でも十分な効果
- より広範囲の微生物への対応
当社の関連製品について
当社では、複数の防腐剤を組み合わせた水溶性切削・研削油剤をはじめ、
現場で追加使用可能な防腐剤製品も各種取り揃えております。
製品の詳細につきましては、ホームページの製品ラインナップをご覧ください。
また、実際の製品選定にあたっては、
- お客様の加工内容
- 使用条件や管理状況
を踏まえたうえで、最適な水溶性切削・研削油剤および防腐剤をご提案いたします。
ご不明点がございましたら、お気軽にご相談ください。



