ステンレスの表面 ~クロムの酸化皮膜~
2024.08.29
「ステンレス表面は錆びているの? 錆が錆を止めるってどういうこと?」
回答)
金属の酸化物を錆と呼ぶのであれば、ステンレス表面は錆びていることになります。
ただしこの錆は皮膜状でとても薄いため、錆びているように見えません。さらに一般的な環境下では内部へ浸食していく錆ではありません。
そのため『鉄の錆』と違って深く拡がりにくい性質を持ち、錆を止めているように見えます。
ステンレスが錆びにくいことはよく知られています。
工業製品では錆びやすい外気に触れる部分や水と接触する部分で多く使われます。
その錆びにくさから、塗装・メッキをせずに使われる製品も多くあります。
身近なステンレス製品はスプーンやフォークです。よく見ると、18-8とか18-10とかハイフンを挟んだ2つの数字がマーキングされています。
これはステンレスを構成する金属の含有量だそうです。
18-8は、「クロム」という金属が18%、「ニッケル」という金属が8%入っており、残りが「鉄」であることを示しているそうです。
鉄は空気中の酸素や水と結びついてもとの姿(=錆)に戻りたい(金属はなぜサビるのか?参照)のですが、クロムを混ぜ込んだステンレスは少し挙動が違います。
ステンレスの表面でも鉄材と同じように、鉄、クロム、ニッケルなどが酸素と結びついて錆(化学の言葉で酸化物と言います)を作ろうとします。
このときクロムがつくる錆(酸化物)ががっちりスクラムを組んで皮膜状となり、表面を薄く覆うことが知られています。
すぐ近くで鉄も錆びていこうとしているのですが、クロムの酸化皮膜が覆うことでそれ以上錆が進行しない状態(錆びにくい性質)になるそうです。
クロムの酸化皮膜のおかげです。
鉄の黒錆と同様、表面の錆が内部を保護するおもしろい現象です。