水溶性防錆剤のメカニズム
2023.05.17
質問)
鉄に水をつけると錆びるのに、「水」溶性の防錆剤ってどういうこと?
なぜ錆が発生しなくなるの?
回答)
水に溶ける防錆成分を使っているからです。(当たり前かも。。。)
その成分は、「水」が鉄を錆びさせる工程(段階)を遅くすることができます。
詳しいことを研究員に訊いてみました!
「錆」と呼ばれる状態ができあがる化学反応は、一度に進むわけではなく何段階かで進みます。
たとえば、
①鉄表面に水が接触すると
②ほんのわずかに鉄が溶けだします。
③そこへ酸素がやってきて溶け出して反応しやすくなった鉄と結びつき錆のもとができ、
④それがさらに酸素と反応して赤茶色の目に見える錆に成長します。
実際にはもっと細かい段階があるそうです。
このうちの錆につながる原因を取り除く、または反応を遅らせる性質をもっていればそれは防錆剤です。
例えば、「ⅰ水が接触するのを防ぐ」、「ⅱ鉄が溶けだすのを防ぐ」、「ⅲ錆の成長を遅らせる」などの性質です。
このような性質を持った物質の中で水に溶けるものを組み合わせたものが水溶性防錆剤です。
使用条件に合った性能を出すために、様々な原料を「探して、探して、探して、やっと見つけて、配合に組み込んでいる」とのこと。
時には、100通り以上のものを試作することもあるようです。
ところで、水の中で「ⅰ水が接触するのを防ぐ」とはどんな状態なのでしょう?
水中で多量の水分子がいるなか
「鉄表面に防錆成分の分子が群がっている状態」をイメージするとわかりやすいとのこと。
このイメージは「ⅱ鉄が溶けだすのを防ぐ」ことにもつながります。
ただ、水溶性の「防錆成分分子の群がり」は膜としてはとても薄いので、
油性より防錆期間は短くなってしまいます(この記事参照)。
では「ⅲ錆の成長を遅らせる」とはどんな状態なのでしょう?
それは液性をアルカリ性にすることで、錆のもとができても急激に錆の成長を遅くさせる状態のようです。化学の言葉で不働態皮膜と呼ぶそうです。
一方で、液性が酸性だと腐食が起こり、上記イメージ⓶~④が進行し、錆がどんどん成長してきます。
当社の水溶性防錆剤(メカヒビターシリーズ)も弱アルカリ性です。
当社水溶性防錆剤にはいろんな品番があります。
今回は鉄に対しておおまかに4段階で説明を聞きましたが、
材質や使用条件に合わせて錆を進行させる要因を取り除く(遅らせる)ような物質を
組み合わせていろんな製品がつくられているとのことでした。
当社では、お客様の希望条件や防錆期間をお聞きし、適した防錆剤をご提案します。
お気軽にお問い合わせください。